「『努力すれば必ず成長する』と思える生徒」

5月24日(火)、船橋アリーナで今年度の体育祭が行われました。中学1年から高校3年までの6学年を縦割りにして4チームに分かれて競う、生徒が創りあげる行事です。競技と応援合戦の合計点で「総合優勝」が決まるのですが、それとは別に「競技優勝」と「応援合戦優勝」があります。つまり、3つの優勝を4チームが目指して全力を尽くすわけです。

私は開会式で、「中村の校訓は『清く 直く 明るく』です。正々堂々と伸びやかに爽やかにやりましょう。」と話しました。生徒たちは力強く競技に取り組んでいました。1年、4年、6年の学年全員の演技では、ハーモニーを醸し出していました。応援合戦では、それぞれのチームが企画力と団結力を見せてくれました。生徒実行委員長と副委員長の2人が考えた今年度のテーマ、“Strength in Unity~みんなで力を合わせよう”が、さまざまな場面で表現されていました。

そして閉会式。得点が発表され、1つのチームが競技優勝に輝き、もう1つのチームが総合優勝と応援合戦優勝の栄冠を獲得しました。優勝した2チームは、涙を流しながら笑顔で喜んでいましたが、他の2チームは落胆を隠せませんでした。私は、2チームの優勝を讃えた後で、優勝を逃した2チームに、「私は結果も大切にしますが、プロセスも大切にします。顔を上げましょう。そして胸を張りましょう。自信を持ちましょう。堂々と閉会式に臨んでください。」と言いました。

私が生徒に伝えたかったのは、「努力しても報われない時がある」ということではありません。体育祭であれば、全員が優勝を目指して頑張るわけです。しかし、優勝は1つのチームにしか訪れません。その時に、「努力しても報われない時がある。でも、努力すれば必ず人は成長する。」と思うことが大切なのです。優勝してもしなくても、それまでの努力が色褪せることはありません。結果(目標実現)を求めて行動することは大切です。しかし、結果だけを求めて行動することは、偏った成長をもたらしかねません。同心円の木の幹のように、健やかな成長を遂げることが重要なのです。

成功した(目標を達成した)時は、その要因を冷静に分析して次に生かす。挫折した(目標を達成できなかった)時は、その原因を真摯に受けとめ改善し次に生かす。そして、成功しても挫折しても、そこまでのプロセスをきちんと評価し、自分を褒め、次への活力を自分で生み出す。これが「清く 直く 明るく」生きるということです。プロセスを大切にする生徒は、結果がどうであろうと諦めたりしません。歩みを止めたりしません。諦めずに前進し続ける生徒の心には、「失敗」という言葉は存在しません。なぜなら、「諦めた時が失敗」だからです。優勝を逃した2チームの生徒たちは、顔を上げて、胸を張って、自信を持って、堂々と閉会式に臨んでくれました。

「心に聖火を抱く生徒」

大人は、欲張りです。今までテストで60点前後だった生徒が80点をとった時に、「すごいね」と努力を讃えた後に、「次は90点をとれるように頑張って」とつい言ってしまいます。保護者の方の中には、95点をとった娘に、「ここ間違えなければ100点だったじゃない、もったいない」と言ってしまう方もいます。どちらも、「もっと伸長してほしい、潜在能力をもっと発揮してほしい」という愛情に満ちた親心から発せられた言葉です。長い人生経験から、ここでもっと頑張っておけば将来の成長が期待できると思っての言葉です。

しかし、同じ内容の言葉を生徒(娘)が発したらどうでしょう。「すごいね」と褒められた後に、「次は90点を目指して頑張ります」という言葉が生徒の口から出たり、95点の娘が自ら、「今度は100点とれるように頑張るからね」と言ったらどうでしょう。このような自発的な言葉の表出こそが、生徒(娘)の自主性が発揮され始める瞬間です。自立・自律的飛躍の兆しが芽生える瞬間です。私たち大人は、このような強い意志を備えた言葉が生徒(娘)の口から自然に出るまで、「欲張り言葉」を我慢するべきです。

先日、高校生とお話をする機会がありました。「あなたの長所、セールスポイント、強みを教えてください」という私の質問に、その生徒は少し躊躇した後に、「真面目で、物事に真剣に取り組むところです」と答えました。私は、「もう少し詳しく、具体的に説明してください。、遠慮しなくていいのですよ」と問い直しました。すると、その生徒は、瞳を潤ませ涙を流し始めました。少し落ち着くのを待って、「なぜ涙が流れたの」と尋ねてみると、「私は、友人や家族から真面目で真剣だと言われるのですが、自分では真面目・真剣と評価されるような域に達しているとは思えないのです。周囲からの評価と自己評価とのギャップに、『もっと頑張らなきゃ』と思ったら涙が出てきてしまいました」と答えてくれました。

このような生徒もいるのだと、正直驚きました。

一呼吸置いて私はまず、「他者から評価されたら素直に受けとめていい、喜んでいい、自分を褒めていい、自信を持っていい。そして、あなたはそんなことで天狗になったり、思い上がったりする生徒ではないと思っています。6年間担当してきた学年の先生たちも同じだと思います」と言いました。慰めではなく、事実を素直に伝えました。そして、「他者から褒められてもまだまだだと思える自分、驕ることなく自分に限界を設けない自分、落ち込まない、怯まない、諦めない自分、そんな自分を大切にしてほしい。それがあなたの、大きな、大きな長所であり強みなのですから」と最後に伝えました。その時の、目を潤ませながらの微笑みが、強く印象に残っています。この生徒は、中村が追求する自主自律型学習者です。自らの心にやる気という火を灯し続けることができる生徒です。打ち上げ花火ではなく、聖火のような持続可能な向上心を持つ生徒です。