「縦の比較ができる生徒」

6月18日(土)に、1年生の保護者を対象とした「保護者キャリアガイダンス」が行われました。保護者の方々にも、中村の「キャリアデザイン」の方針、目的、目標、実践をご理解いただき、保護者の方々と私たちが協働して生徒のキャリアデザインへの支援をしていくことを目的としたガイダンスです。本校は全国の学校に先駆けて、2002年度から「キャリアデザイン授業」を実施しています。追求しているのは“Competency(総合的変化対応能力)”の養成と社会貢献・協奏社会創造の意識醸成です。長年の取り組みが評価されて、2014年には「キャリア教育優良学校」として文部科学大臣から表彰を受けました。

中学1年生は、6月13日・14日・15日の3日間、初めての中間考査を受けました。答案が返却されて自分の点数が分かり、今、すべての生徒がドキドキしています。その理由は学年順位です。点数の良かった生徒はワクワクしているかもしれません。点数の良くなかった生徒はハラハラしているかもしれません。中間くらいの点数を取った生徒はソワソワしているかもしれません。

保護者キャリアガイダンスでは、学年順位が出た時の生徒への対応方法が紹介されました。「学年順位を一番重く受けとめているのはお嬢様方です。点数が良くなかったからといって、叱ったり、怒ったり、責めたりしただけで終わらせないでください。それは、過去だけに目を向けていることになってしまうからです。できた所を褒める、もう少しでできそうだった所を励ます、そして次の考査に向けての意欲を育むことを実践してみてください。それが未来志向の生徒を育てることに繋がります。」過去の事実は変わりません。しかし、過去の事実に対する捉え方は変えることができます。

すべての生徒は学年順位という過去の事実に囚われています。相対評価に囚われていると言うこともできます。もちろん、相対評価を高めるための努力をすることも必要です。しかし、絶対評価を高めるための努力は、更なる自己伸長に結び着きます。よって、横の比較(相対評価)だけでなく、縦の比較(絶対評価)を意識することが大切なのです。どんな点数であっても、90点でも30点でも、次の定期考査ではそれを上回る点数と取ろうと思い、そのための方法を冷静に考え、実行に移す。これが、絶対評価を高めるための方策です。

先日、中学1年生が手紙をくれました。その中に、「9月の期末考査は頑張ります。」と書いてありました。学年順位はまだ発表されていないので、この生徒は順位の善し悪しではなく、自分の努力不足だった点を冷静に振り返って、次の考査への努力を決意したのでしょう。「昨日の自分より今日の自分。今日の自分より明日の自分。」このように考えられる生徒は、他者との比較に留まらない生徒です。絶対評価を高めるための持続可能な努力をすることができる生徒です。伸び続ける生徒です。これからの生涯学習社会を生き抜いていくことができる生徒です。縦の比較をして、自助努力をしようと思える生徒です。

「表現力と理解力を兼備した生徒」

先日、学校からの帰り道、自宅の最寄り駅前広場に、十数人の人々が立ち止まっていました。午後9時前の涼しさを感じる夜でした。近くまでいかなくても音楽が聞こえてきたので、ストリートミュージシャンだと分かりました。優しく、デリケートで、人が自分の心の扉を自ら開いてしまうような男性奏者のサックスの音色に、魅了され歩みを止めている自分に気がつきました。

私たちは様々な事象について考えています。そして、無意識のうちに、多くの思考力を駆使して考えを巡らせています。“Logical Thinking(論理的思考力)”、“Communicative Thinking(相互理解的思考力)”、“Critical Thinking(批判的思考力)”、“Collaborative Thinking(協働的思考力)”、“Glocal<Global&Local> Thinking(地球的思考力)”、“Analogical Thinking(類推的思考力)”、“Rational Thinking(合理的思考力)”、“Causal Thinking(因果的・原因的思考力)”、“Attribution Thinking(帰属的思考力)”、“Citizenship Thinking(市民的思考力)”、“Intake Thinking(摂取的思考力)”。そして、どの思考力を使って考えたとしても、その思考に基づいて判断し、時には他者へアウトプットします。前述のサックス奏者は「音」を通じて表現し、私はその音から彼の判断とその基盤となる思考を受けとめたのです。

もちろん、表現方法は音楽だけではありません。「話し言葉」「書き言葉」「口調」「話す速さ」「言葉遣い」「声のトーン」「声の大きさ」「表情」「しぐさ」「ジェスチャー」「目線」。そして時には、「涙」「沈黙」さえも、他者への意思伝達方法となります。

6月4日(土)の学校説明会で、2年生(中学2年)と6年生(高校3年)が自分の「中村ライフ」についてプレゼンテーションをしました。2年生は、力強い話し言葉と、生き生きとした声のトーンと、真実を伝えようとする表情と目線で、自分の中学校生活について素直な気持ちを伝えていました。6年生は、人を引き込む口調と、強い意志を感じさせる声のトーンと、自己効力感溢れる表情と、時宜に応じたジェスチャーと、聴衆全員を見渡す視線で、経験に裏打ちされた独自の生き方を伝えていました。6年生の発表が終わった後、私は2年生に「先輩のお話はどうだった?」と尋ねてみました。2年生は間髪を入れずに「鳥肌が立ちました」と、瞳を潤ませた清々しい笑顔で答えました。この生徒は4歳年上の先輩のプレゼンテーションの底にある、「思考と判断」を心で受け取ったのだと思います。6年生の思考と判断と表現が、一人の後輩の心と頭を揺さぶったのです。6年生の表現力と2年生の理解力が共鳴した瞬間です。

いつでも、どこでも、誰とでも、何をしていても、「表現と理解の共鳴」が創出される社会、それが「協奏社会」です。そして、その創出の土台となる思考力・判断力を養う中学校・高等学校という場に、表現力と理解力を兼備した生徒が増えていくことを私は目指しています。