“Time is life”

7月16日(土)から昨日、7月28日(木)まで2週間、新潟県湯沢まで学習合宿に行ってきました。朝8時から授業が始まり、夜の11時30分まで勉強する6泊7日の勉強のためだけの合宿です。国語・数学・英語の3教科の授業を朝から夕方まで行い、夕食後は復習のための自学自修を行うというプログラムです。私は6年生(高校3年生)と4年生(高校1年生)の英語の授業を担当しました。

4年生の授業では毎日単語のテストを行い、7日間で合計800語を確認しました。もちろん、合格しなかった場合は追試です。授業では、基本例文の確認、文法問題の演習、英文精読を行い、この3つの視点から準動詞(不定詞・動名詞・分詞)を掘り下げました。使用したオリジナルテキストには、次のような英文を入れておきました。

”Life is very short, and the future is hard to predict.  People say, ”Time is money”; time, however, is more important than money.  Money lost can be gained again, but time lost will never come back.”(人生は非常に短く、未来は予測し難い。「時は金なり」と言われるが、時はお金より重要である。失われたお金は取り戻せる可能性があるが、失われた時間は決して戻ってこない)

当然のことですが、自分でお金を稼いだことのない4年生にお金の大切さを説いても、実感はあまり湧いてきません。また、平均寿命まで70年以上ある4年生に時の尊さを諭しても、私たちが抱いているような感覚は表出されません。しかし、時間はお金よりも重要なものであるということを、4年生は頭ではきちんと理解してくれました。

6年生の授業では、大学入試文法問題演習と大学入試読解問題解法確認を行いました。全員が4年制大学進学を目指しているので、完全に大学入試対応の内容です。また、毎日、食事の後には、モチベーションを高めて地道な努力を続けてほしいという願いを込めて、引率の先生方からお話がありました。私は最後の夕食後に話すことになりました。6年生には、「受験まであと6ヶ月、時間は有限である」という実感があります。また、「受験料、入学準備金、入学金、授業料という多額のお金を親に負担してもらう」という感謝の気持ちがあります。6年生なら、より現実的に受けとめてくれるという確信があったので、私は次のような話をしました。

「”Time is money”という視点には弱さがあります。皆さんには”Time is life”と思ってほしいのです。失われた時間は戻ってこないと考えることも大切ですが、今、皆さんが遣っている時間は、自分の人生、生活、命の一部を遣っている時間だと考えてほしいのです。だからこそ、『今、ここで』という意識を持って、『今、ここで、全力投球するんだ』という強い意志を持ってほしいのです。すでに実践している人もいます。まだ実践していない人も、今、ここで、できるように変わってください。皆さんならできます。」

自分の人生、自分の生活、自分の命を大切にすることは、「自分」を大切にすることです。自分を甘やかさない、自分に嘘をつかない、自分を欺かない・・・。そんな生き方ができる生徒がいます、そんな生き方をしようとしている生徒がいます。私が生徒から人生を教えられた瞬間でもありました。

「知的好奇心というアンテナを持つ生徒」

先日、中学1年生の生徒が私を訪ねて職員室に来てくれました。「達成できたことを自慢しに来て」という、始業式に私が全校生徒にお願いしたことに応えてくれたのです。その生徒は一所懸命、2つのことを話してくれました。「入学後1ヶ月でクラス全員の顔と名前を一致させることができました。もう一つは、ヘアードネーション“Hair Donation”をやりました」

恥ずかしながら私は、ヘアードネーションについての詳しい知識を持っていませんでした。そんな私にその生徒は、「病気で髪を失った子ども達のかつらを作る団体に、自分の髪を寄付することです。美容院を通じて寄付することができます。でも、30センチ以上でないと寄付できないのです。私は41センチ、母は33センチ、寄付しました。最初に髪を6等分にして結び、その後その束ごとにカットしました」と教えてくれました。

小学校6年生の時に、「自分も誰かの役に立ちたい、でも、小学生なのでできることが少ない」と考えていたそうです。そんな時に、ヘアードネーションのことを知り、それから髪を伸ばし始め、「受験が終わり中学生になったら寄付しよう」と決心し、その目標を達成したのです。中学・高校6年間で3回寄付する目標を設定したので、これからまた髪を伸ばしてあと2回寄付するそうです。

何かをやろうとしても、すぐに結果が出ないものだと、途中で止めてしまう人が増えています。長い期間初心を持ち続けることを苦手とする人が増えています。確かに髪を伸ばすこと自体は、ある意味で簡単なことかもしれません。しかし、中途半端な長さだとまとまりにくくなりうっとうしいとか、長くなってくると洗うにも乾かすにも時間がかかって面倒くさいとか、いろいろなマイナス感情も出てきます。それを乗り越えて初志を貫徹するには、やはり意志と努力が必要です。それも長い年月持続可能な強い意志と地道な努力です。

この生徒は、小学生の時点で知的好奇心を備えていたのだと思います。世の中には情報が溢れています。2020年にはスマートフォンを通じて、今の200倍の情報を入手することができると言われています。多くの情報の中から、ヘアードネーションという情報をキャッチして、自分の思考に結びつけ、実行計画を立て、強い意志を持って行動し、それを継続させる。このプロセスこそが、これからの社会で求められる大切な「力」の一つです。「小学生の自分にできることは何か」という自分自身への問いかけは、社会貢献に結びつく「知的好奇心」です。自分にとって、興味のあることでもないことでも、学校や塾の勉強に関係あることでもないことでも、心にアンテナを持っている生徒なら、情報の本質を捉え、自分の思考に組み入れ行動することができます。さまざまなアンテナをいろいろな方向に張り巡らす。「人生、無駄なことなど一つもない」という価値観にも通じています。“Meritocracy(業績主義)”が追求されがちな世の中で、知的好奇心というアンテナを全方位に張り巡らすことができる、懐の深い中学生・高校生を育てることが、中高6ヵ年一貫校の大切な使命の一つです。