「揺るぎない自信の芽生え」

12月14日(水)、中学3年生を対象に「第2回中村高等学校進学説明会」を90分構成で行いました。前半が、高校1年次のカリキュラム及び選択科目(地理歴史・芸術・スペイン語)の説明とオーストラリア短期研修(約2ヶ月)の説明で、後半が、キャリアコンサルタントとしての校長講話というプログラムです。

私は後半で、「皆さんが短所と思っていることは、捉え方を変えれば長所でもある」「希望には終わりがない」「CAN MUST WILLを励行することが自信を高めていく」「皆さんの周りには支えてくれる人、守ってくれる人、励ましてくれる人が必ずいる、その人に感謝することを忘れないで」「何かにぶつかり、迷い、挑戦し、挫折し、ということを繰り返して自分を育てていく感覚のことが『自信』なんだ」ということを、具体例を交えながらお話ししました。

生徒たちは主体的に私の話を聴いていました。そして、自分なりに考えてくれました。「いろいろなことにチャレンジしてみて、成功の要因と挫折の原因を見つけ、自分を改めることができる高校生になりたい」「高校生になると、自分で決めることが多くなるので、自分が何をしたいのか、何をすべきなのか、もっと考えたい」「今の自分で本当に大丈夫なのか、よく考えてみることが大切だ」「高校生になるまでに、今の顔つきから大人の顔つきになれるよう、色々な面で努力したい」「今までの考えを捨てたりはしないが、一回しまおうと思う」このような決意が行動に繋がり、その行動の継続が自信を形作っていくのだなと頼もしく感じました。

秋桜の花を見たいと思った時、皆さんはどのように行動するでしょうか。「スマホで検索して画像を見る」「花屋さんで鉢植えや切り花を買う」「コスモス街道まで行って見る」「種を手に入れて、自宅で育てて、花を咲かす」など、人それぞれのやり方がありますが、私が生徒たちに求めているのは、「種から育てて花を咲かせて見る」という生き様です。速効性や効率性の観点からすると、回り道あるいは寄り道かもしれません。成果主義、業績主義、結果主義の経済界の流れには乗り遅れているかもしれません。しかし、中学校・高等学校は単なる「人材養成機関」ではありません。企業が求めている即戦力養成機関でもありません。私は「人」を育てることを大切にしています。そして、決意と行動の本質を追究して、揺るぎない自信が生徒の心に根ざすことを求めています。

説明会終了後、自由参加の保護者の方から「先生のお話は、思春期の揺れる心を持つ娘たちの良い所を一所懸命見つけ出して、考え方を切り替えるように促してくれています。最近、帰宅してからの娘の表情が随分変わってきました」というお言葉をいただきました。私の心を育てて、自信を芽生えさせてくれる言葉でした。

寒さが厳しさを増しています。小学生の皆さん、保護者の皆さま、くれぐれもお身体大切になさってください。そして、皆さまにとって平成29年が素晴らしい年になりますことを心よりお祈りしております。

「自分が変わる~本との出会い」

先月、本校図書委員会から「先生からのLOVE CALL 第26巻」が発行され、生徒全員に配布されました。全教員が選んだ書名とその紹介文が42ページに亘って掲載されている、年1回発行の冊子です。本の面白さを紹介するだけではなく、読書を通じての教員の思考や価値観などが書かれています。私は今年のLOVE CALLに、「動物の権利(デヴィッド・ドゥグラツィア:岩波書店)」を選び、次のような紹介文を書きました。

ペットの幸福は飼い主の気持ちに左右される。ペットの生活は飼い主のライフサイクルや価値観によって決まる。ペットの生命は飼い主の意思に託されている。ペットは飼い主に依存した自己規定を余儀なくされている。

ペットの行動の自由は、人間によって制約されている。昼間はずっと留守番をしていたり、散歩にも短い時間しか連れていってもらえなかったり、遊んでもらえなかったり・・・。また、飼い主が都合のよい時だけ散歩の時間を長くしたり、飼い主の気が向いた時だけおもちゃで遊んであげたりすることもある。しかし、ペットは人間の気まぐれな楽しみのためだけに存在するわけではない。

5年前に我が家にトイプードルの男の子「エル」が来てから、こんなことをぼんやりと考えるようになった。「確かにエルには義務はないが、権利はあるのではないか」「エルに対して自分は、非常に重い責任を負っているのではないか」「エルの基本的なニーズを満たしてあげるために何ができるか」などと考えていた時に、獣医学部に進学を希望している生徒から、「今、『動物の権利』という本を読んでいるのですが、先生にも是非読んでもらいたいです」と言われ、その日のうちに書店に行って購入した。

「動物の権利」には、ペットはもちろん、動物園の動物、工場畜産されている動物、肉食用動物、実験対象にされている動物など、さまざまな動物が持つ権利についての考え方が書かれている。その根底にあるのは、「動物は道徳的地位を持っており、単に人間の利用の対象ではないので、人間は動物を道徳的地位を持つ存在として尊重する態度を涵養する責任を持つ」という主張である。「感覚性を持つ動物は平等な配慮に値する」という主張である。この本を読んだ後にエルと会った時、今までのように「可愛い」とか「癒やされる」とか「留守番で可愛そう」というような感情だけで接していない自分がいた。「ペットを飼うって覚悟が必要で、飼い主である自分が人間として試されているんだな」という価値観が芽生えていた。「権利を持ったエル」に何となく頼もしさを感じて、今までとは違う関係が築かれていく予感がした。

1冊の書籍が、価値観を変えてくれました。思考を広げてくれました。動物へのまなざしから甘さを取り除いてくれました。そして、動物を飼っている者としての行動を変えてくれました。あの時、あの場所で、あの生徒とすれ違い、「勉強の調子はどう?」と声をかけていなかったら、本を紹介してもらうことも、読むことも、深い価値観に気づくことも、思考することも、自分の甘さを認識することも、行動を変えることもなかったと思います。生徒に感謝しています。「動物の権利」と筆者に感謝しています。そして、エルの存在そのものに感謝しています。