「高等学校 卒業証書授与式 校長式辞」

長い文章で恐縮ですが、6ヵ年一貫教育を本校で受けた生徒たちへの校長式辞(抜粋)を、今年度の最終話とさせていただきます。

皆さんは2011年4月6日、中村中学校に入学しました。東日本大震災が起こった直後です。皆さんの代表が、入学の言葉で、「大地震に見舞われた東北の学校は、卒業式や入学式も満足に行えず、辛い思いをしています。そんな中、入学式を迎えられることは本当に感謝すべきことであり、今日という日を未来へ向かう出発の日にしたいと思います」と述べてくれました。素晴らしい決意でした。当たり前のようにある日々の生活が、実はかけがえのないものであることを胸に刻み、感謝の気持ちと被災した人々を思いやる気持ちを忘れずに、これからも過ごしていってください。

さて、卒業生の皆さん、今、皆さんの周りにいる人は友だちです。6年間友情を育んできた友だちです。しかし、ただの友だちではありません。中村という同じ学校で一緒に学んできた友だち、つまり、学友なのです。皆さんの学びには素直さがあります。その素直さは、単に従順ということではありません。疑わないという意味ではありません。知らないことをどんどん吸収する素直さです。知っていることに「その通り」と共感することができる素直さです。違うと思ったことに異を唱えることができる素直さです。この学びの素直さが、友だちを「学友」に変えたのです。三つの素直さは皆さんの長所です。この強みを生かして、皆さんは今後それぞれの場所で活躍し、学友を増やしていくことでしょう。

皆さんは18歳です。いままでの人生の三分の一を中村で過ごしたことになります。生まれてから6歳までとは違います。小学校時代の6年間とも違います。心身共に大人の基盤を形作る6年間なのです。中村で過ごした6年間の想い出は、歳を重ねるにつれて、色褪せるところか、心の中で色濃く、そして深くなっていきます。それが、中学高校時代というものなのです。この6年間が皆さんの原点になるのです。お互いに支え、励まし、寄り添い、同じ時間と経験を共有した場所が、この学び舎なのです。清く澄んだ地で育んだ「少女ごころ」は、必ず皆さんの生きる糧となるでしょう。いつでも帰ってこられる母校があります。いつでも集うことができる学友がいます、いつでも応援してくれる師がいます。どうか、安心してグローバル社会に巣立っていってください。

昨年4月の始業式で、私はこの場で、「皆さんに地球を任せます」と言いました。世の中の多くの人は、「地球を任された」という意識を持っていないかもしれませんが、この「未来の地球を担っているという意識」こそが、これからのグローバル社会で必要なことなのです。まず、自分を見つめましょう。次に、周囲の人に目を向けましょう。さらに、地域に視野を広げましょう。日本を考えましょう。そして、国境のない地球を意識しましょう。その時に大切なことは、中村の校訓「清く 直く 明るく」です。この豊かな人間性が、人と人とを繋ぐ土台となるからです。皆さんなら、「地球を任された一期生」として、多くの人々と繋がっていくことができます。一人の力ではなくチームの力で社会に貢献することができます。美しいハーモニーを奏でる協奏社会を創り上げることができます。

保護者の皆さま、お嬢さまのご卒業、誠におめでとうございます。中村中学校入学前に書いていただいたアンケートの中に、「人として成長してくれることを切に望みます」というお言葉がありました。お嬢さま方はこの6年間で、清く直く明るい人に成長しました。これもひとえに、保護者の皆さまの深い愛情に基づいたご成育の賜物だと思っております。また、私どもへの力強いご支援に心より感謝申し上げます。そのおかげで今日という日を迎えることができました。本当に、ありがとうございます。

卒業生の皆さん、結びに、私からの最後のメッセージをお届けします。「幸せになってください」幸せは自分の外にあるものではありません。環境によって与えられるものでもありません。幸せは自分の心の中にあるのです。自分を認めてあげましょう。今の自分にOKと言ってあげましょう。自分を褒めてあげましょう。皆さんは3年前に夢見る乙女を卒業し、希望を追究してきました。これからも、希望を現実のものにするために、強い意思を持って学び、考え、行動し、一人ひとりのグローバルキャリアをデザインしてください。皆さんに幸多かれと、心よりお祈りして、式辞といたします。卒業、おめでとう。

「心の健やかな成長」

今日は桃の節句です。我が家でも先週、長女と次女のお雛様を当事者不在の中で飾りました。雛祭りは女の子の健やかな成長を祈る行事です。親であれば、娘の成長を願わずにはいられません。3月3日は、心も身体も健やかに育ってほしい、幸せになってほしいという思いを再確認する機会でもあります。

先日、高校3年生が私を訪ねてきました。大学受験の真っ最中で、これから国立大学受験を控えた時期でした。「先生、受験でかなり遅れてしまったのですが、これ、チョコレートと紅茶です」と言って、バレンタインの贈り物を持ってきてくれました。私立大学受験が一段落していたとは言え、数日後に第一希望の国立大学を受験するというタイミングだったので、私はかなり驚きました。自分のこと(大学受験のこと)で目一杯になるのが普通の高校3年生です。人のことまで考える余裕がなくなっても不思議ではない年齢です。なぜこのような心遣いができるのでしょうか。

この生徒は、昨年夏の学習合宿に参加しました。1日10時間の授業と自学自習、全日程で合計60時間の勉強漬けの合宿です。クラシックバレエの発表があったため、7日間に亘る合宿の3日目からの合流でした。全員必修ではなく希望制のプログラムだったので、申し込みをしないという選択肢もありましたが、この生徒は5日間のために、一人、新幹線に乗って新潟まで来ました。そして、すべきことを確実にこなし、合宿の数日後にはイギリスに旅立ちました。高校3年生、受験の夏に、「トビタテ!留学JAPAN」日本代表プログラム高校生コースの選考を通過し、2週間ロンドンのバレエ学校のサマースクールに通ったのです。

他者に対して、気配りや思いやりを持って接することができる人は、心に余裕がある人だと言われます。もちろん、時間の有効利用や優先順位に対する意識を持つことも必要ですが、そのためにも自分を客観視できることが求められます。自分の思考や行動を冷静に評価し、改善点を具体化し、行動を継続することができる人が、心に余裕がある人です。がむしゃらに両立するのではなく、過去に学び、今を見つめ、先を見て行動していくことが、他者へのまなざしや心遣いを生み出していきます。

上述の高校3年生には、このようなメタ認知の機能が備わっています。どんな状況であっても、また、日程が重複したり接近していても、「大変だな、無理かな」と考えるのではなく、「どうやったらすべてこなせるか」という思考を冷静に生むことができるのです。このような、心の健やかな成長を、今日の桃の節句で祈りたいものです。