「不完全なものの魅力」

勉強をしていて「よし、完璧だ」と思える時があります。学習範囲が狭かったり、内容が易しい時には、やり残すことなく100%の学びを実践することができます。しかし、範囲が広く学習量が多くなったり、内容が難しくなったりすると、完璧にやり遂げることはなかなか困難です。そして、そんな時でも、誠実な人は「やらなければ」と思ってしまいます。

私たちの頭は、完成していないことに強い記憶や印象を残してしまうものだそうです。心理学用語ではこれを「ツァイガルニック効果」と言います。不完全になってしまったことを完成させたいと思う気持ちが強くなるということです。

勉強が思うように進まない時には、この「ツァイガルニック効果」をうまく利用してみたらどうでしょう。どんな勉強でも、まずは全力で取り組んでみましょう。そして、「これが終わったら休憩しよう」と決めずに、やっている途中で休憩をとるのです。つまり、「やり残し感」を抱いたまま休息するのです。そうすれば、「完成させたい」という気持ちを持って、勉強を再開することができます。だらだらと休憩を長引かせることもなくなるでしょう。

私たちは完全なものを求める傾向があります。しかし、その傾向は完成したものだけを評価するのではなく、スペイン、バルセロナのサグラダ・ファミリアのような、完成に向かう姿を求めることにも通ずるのかもしれません。「まだ見ぬ完成形を求める気持ち」、やり残し感が後押しする「前に向かおうという意志」、この先どうなるのだろうという「強い興味・関心」・・・。不完全なものには、背中を押して前へ一歩踏み出させてくれる不思議な魅力がたくさんあります。

自ら中途半端な状態を作りだして、やり残し感を大きく膨らませて、身体をゆっくりと休ませ、「完成させたい」という強い意志の力を借りて、勉強楽しんでみてください。

「心のそよぎ」

先月、中学1年生を対象に「詩を通して学ぶ言葉の大切さ」という国語の授業が行われました。夏休み前から6回連続で計画された、語彙や表現方法の幅を広げて豊かな文章表現力を身につけることを目的とした授業です。

詩集の校正刷りを読み、理由を添えて気に入った作品を3編選ぶ授業から始まり、テーマを決めて詩を創作し、学年全員の作品を読んで理由を記して気に入った作品を選び、良いと思った言葉や表現を抜き出す授業へと結びつけ、その理由をグループで話し合って発表する授業へと展開していきました。

当日は詩人をお招きし、生徒の作品から素晴らしい表現を選んで発表していただきました。「自分が力を入れた部分だ」と嬉しく思った生徒や、「何気なく書いた表現を選んでくれた」と驚く生徒もいました。最後の講評では、「良い詩とは、読む人一人ひとりがそれぞれ違った気づきや発見を生み出すものだ」というお言葉をいただき、生徒たちは自分の作品や自分の表現、そして自分の感性に自信を持ちました。

私は詩人の方の「詩作とは、今ここにいて、今心の中に生まれたものを文字にする行為で、読み手の心がそよぐことが大切だ」という言葉に心を打たれました。中学校・高等学校の6年間は単なる人材を育てる期間ではなく、人が育つ期間であると私は言い続けてきました。それをもう少し深く考えると「心が育つ」ということになります。「そよぐ」という言葉は「少しの風に揺れたり、かすかに音をたてたりする」という意味です。話された時でも書かれた時でも、その言葉によって心は、音をたてたり揺れたりして育ちます。そのような「そよぎ」が心の中に繰り返し生まれたら、子どもたちの人生は豊かで多彩なものになります。

「心のそよぎ」・・・。大切にしたい言葉です。