「矜持」

「天使はここに(朝比奈あすか著)」という本について、書評家の吉田伸子さんが次のようなコメントをお書きになっていました。

『高校1年生から7年間、同じファミリーレストランで働き続けている主人公真由子。馬鹿がつくほど生真面目で、人間関係も不器用。今どき女子とは思えないほど、おしゃれや恋愛にも疎い。けれど、彼女の胸にはいつも、仕事への矜持がある。幼い頃から自分にとって特別な場所だったファミレスを、誰よりも大事にしているのだ。いつも貧乏くじばかりひかされるのだが、真っ直ぐに、仕事に取り組んでいく。そんな彼女の姿から、働くことの真の意味が、ひたひたと伝わってくる。私たちの社会を支えているのは、世の中にいる無数の真由子たちなのかもしれない。』

真由子には「矜持(きょうじ)」があります。自分の能力を信じて持つ誇りがあるのです。人は、自負やプライドを持つと強くなります。真正面から物事に取り組むことができます。その勢いは自分の前進を加速させるだけでなく、周囲の人の背中を押すことにもなります。そして、そのような連鎖が社会における一人ひとりの役割の意味を明らかにしてくれます。「縁の下の力持ち」の時もあるでしょう。「グループの牽引車者」としてリーダーシップを発揮することもあるでしょう。どんな役割でもこなせる自信を大切にしましょう。

「自分を信じる。自分の言葉に責任を持つ。自分の行動にプライドを持つ。今の自分を肯定する。未来に向かって邁進する。」このプロセスが自分の能力をさらに高め、未来の自分を支えるとともに、他者をも支えることに繋がります。

「オリジナル花火」

ある書籍によると、先生という仕事は、生徒の思考を広げることに挑戦し、広げようとしている生徒を励まし、挑戦してうまくいかなくてもやり直すことのできる安全な場所を創ってあげることだと言われています。この主張は、先生を「大人」に、生徒を「子ども」に変えても成り立ちます。学校外でも大人なら、子どもの思考を広げてあげて、励まして、やり直すことができる場を提供してあげることができるからです。

他人に頼って学習に取り組むことによって、思考が広がるとは思えません。自らの意志で学び、その学び自体に楽しみを見いだす域に達して初めて、思考の広がりが実現するのです。そのために、大人は子どもの情熱や興味・関心を大切に受けとめてあげるとともに、将来の夢や希望を追いかけるために必要な知識・スキルなどを子どもに身につけてもらう必要があります。

「導火線に火をつけるようなものだ」と言った人がいます。後は自然に燃え続けて、花火が打ち上がるからです。確かに、導火線に火をつけてもらうことは楽で安全かもしれませんが、子どもにとっては、自ら導火線を創り、自分で火をつける方が楽しいのではないでしょうか。途中で消えてしまわないようなしっかりとした導火線を持つ花火を創り、火をつけて空に花火を打ち上げることほど、達成感を感じる瞬間はないと思います。自分だけのオリジナル花火を、何発も何発も打ち上げましょう。

「バトン」

バトンを確実にもらう。バトンをしっかり握って走る。バトンをスムーズに渡す。リレーで使われるバトンには、さまざまな思いと「つなぐ」という究極の目的が込められています。

先日、あるお父さまが、「自分の娘にきちんとバトンを渡したい」と力強く仰いました。その言葉には、自分が親から受け取った素晴らしいバトンを、自分の娘にも引き継がせたいという思いと、自分が生きてきた時代とは違う21世紀を生き抜いていけるような力を身につけてほしいという願いが感じられました。

小学生はもちろん、中学生や高校生も、このような保護者の思いや願いを一身に受けていることでしょう。その思いや願いは、「中学受験で良い結果を出してほしい」「いきたい大学に合格してほしい」という単純な希望ではありません。「中学校に入学して、勉強だけでなく好きな部活動で全力を尽くし、行事や委員会活動に楽しく取り組み、高校ではより深く学んで、自分の将来を見据えた進学先を見つけて大学などに入学し、好きな学問に全力投球して、自分の強みを生かしながら働き、キャリアをデザインしつつ充実した日々を過ごしてほしい」という、心の叫びと言ってもよいでしょう。

受験生の皆さん、中学受験でも高校受験でも大学受験でも本質は同じです。自分が定めた目標に向かって一歩一歩着実に進んでいけばいいのです。小学生の自分から確実にもらったバトンを、中学生の自分がしっかりと握り、高校生の自分にスムーズに渡していけばいいのです。自分のバトンを、自分の持ちやすい形にしながら、未来の自分につないであげましょう。