「冬芽」

秋に生まれ、一冬越して、春になって成長する芽を「冬芽(とうが・ふゆめ)」と言うそうです。桜の花を見つめる人はたくさんいます。若葉が好きな人も多いでしょう。一方、葉をつけていない木にまなざしを向ける人は少ないかもしれません。しかし、枯れたように見える木々も、実は生命再生の力を芽に蓄えて、春への準備を着実に進めているのです。

小さな葉をむき出しにして冬を越そうとしても、厳しい寒さで凍ってしまったり、鳥に食べられてしまったりして、春を迎えることができないことがあります。そうならないように、木々は厚い衣や毛皮をまとって、葉やつぼみを覆います。その方法は樹木によってさまざまで、多彩な冬芽の形に表れています。つまり、冬芽には木々の個性があるのです。

受験生の皆さん、皆さんの「冬芽」はどんな形をしていますか。どんな防寒着をまとっていますか。この問いに答えられるのは、皆さんだけです。皆さんが今までやってきたこと、今やっていること、そしてこれからやろうとすることが、皆さんだけのたった一つの冬芽を創っていくからです。

一朝一夕にできるものではありません。一歩一歩着実に歩んでいくプロセスが、個性豊かな冬芽を創っていくのです。そして、その中で、みずみずしい葉を育て、勢いのあるつぼみを膨らませていくのです。受験生の皆さん、上を向きましょう。葉のない木々にまなざしを向けましょう。そして、冬芽の生命力から元気をもらいましょう。皆さんの努力は春に、そして未来に向かっています。

「この声を未来へ」

中村学園は今年、創立110周年を迎えました。11月30日には、「中村学園創立110周年記念音楽祭」が開催され、平成3年から続けてきたフルートの演奏を中心とした音色をお贈りすることになっています。夏休み前には「記念誌」が全校生徒に手渡されました。タイトルは、全校生徒の応募の中から、現高校3年生が創案した「この声を未来へ」に決まりました。

また、この記念誌は生徒・教職員だけでなくさまざまな人々にも贈呈させていただいています。先日、30年振りに母校を訪れた卒業生にプレゼントしたところ、感想文が届きました。一部ではありますが、卒業生の母校への思いが詰まっておりますので、ご紹介させていただきます。

「自信がなく、何をやっても上手くいかず、できないことを周りのせいにしてしまうような私に、『君はできる』と声をかけ続けてくれた先生がいた。他の人ができないと思うようなことでも『できる』と信じてくれた。私はその期待に絶対に応えたいと思った。また、『時間に流されず、自分で時間を流すような人になりなさい』という先生の言葉は、私の道標になった。どんな状況でも誠実にベストを尽くすことだけは忘れなかった。そして、人は人に生かされていることを知った。私は中村学園の卒業生であることに誇りを持って、『この声を未来へ』伝え、繋いでいこうと思う。私の手をいつも離さないでくれた大事な恩師に再会した時に、恥ずかしくないように生きていこうと思う」

「克服の美しさ」

「水晶」という鉱石の名前を聞いた人は多いでしょう。パワーストーンとしても有名で、勇気の象徴や御守りとして携える人もいます。水晶は、地球の中心部に含まれる二酸化ケイ素が地中のマグマの熱で溶かされ、それが冷えて固まってできる石英のうち、透明度が高く無色のものだそうです。

冷えて固まった水晶が新たに熱を加えられると、再び成長が始まります。すると、結晶の内部に木の年輪のように、山の形をした模様ができ上がり、それがいくつか重なる場合もあります。ロシアの民芸品マトリョーシカのように、小さい結晶を包むようにより大きな結晶が形作られます。それを、「山入水晶」とか「ファントム水晶」と言うそうです。

水晶は何千年、何万年という長い時間を経て形作られます。その時間に比べれば人の人生は、一瞬と言っても過言ではないほど短い時間ですが、私たちも一生の中で成長していきます。伸長するための努力を中断してしまうこともあるでしょう。人間にとって、絶えず努力し続けることは至難の業かもしれません。しかし、諦めずに再度努力を始めれば、過去の自分を包み込むように、より大きな新しい自分が形作られます。その中には、過去の自分の姿が含まれています。努力を中断するまでひたむきに頑張っていた尊い自分の結晶です。

前進を諦めてしまった自分を乗り越えて努力を再開し、さらなる高みを目指して透明感のあるより大きな自分を創り上げていく。この営みのプロセスには、「克服の美しさ」があります。自分だけの「山入水晶」という御守りを持ちたいものです。