「克服の美しさ」

「水晶」という鉱石の名前を聞いた人は多いでしょう。パワーストーンとしても有名で、勇気の象徴や御守りとして携える人もいます。水晶は、地球の中心部に含まれる二酸化ケイ素が地中のマグマの熱で溶かされ、それが冷えて固まってできる石英のうち、透明度が高く無色のものだそうです。

冷えて固まった水晶が新たに熱を加えられると、再び成長が始まります。すると、結晶の内部に木の年輪のように、山の形をした模様ができ上がり、それがいくつか重なる場合もあります。ロシアの民芸品マトリョーシカのように、小さい結晶を包むようにより大きな結晶が形作られます。それを、「山入水晶」とか「ファントム水晶」と言うそうです。

水晶は何千年、何万年という長い時間を経て形作られます。その時間に比べれば人の人生は、一瞬と言っても過言ではないほど短い時間ですが、私たちも一生の中で成長していきます。伸長するための努力を中断してしまうこともあるでしょう。人間にとって、絶えず努力し続けることは至難の業かもしれません。しかし、諦めずに再度努力を始めれば、過去の自分を包み込むように、より大きな新しい自分が形作られます。その中には、過去の自分の姿が含まれています。努力を中断するまでひたむきに頑張っていた尊い自分の結晶です。

前進を諦めてしまった自分を乗り越えて努力を再開し、さらなる高みを目指して透明感のあるより大きな自分を創り上げていく。この営みのプロセスには、「克服の美しさ」があります。自分だけの「山入水晶」という御守りを持ちたいものです。